コールセンター業務において、見落とされがちだが改善余地の大きい業務——それがアフターコールワーク(ACW)です。通話が終わった後の記録・処理作業に時間がかかると、応答率の低下や顧客満足度の悪化、オペレーターの負担増といったさまざまな課題を引き起こします。
本記事では、ACWを効率化することで得られるメリットや、実際に成果を上げている現場で使われている具体的な改善手法5選、さらにKPIを用いた効果測定と改善サイクルの回し方までを解説します。
「現場の負担を減らしながら、顧客満足度も高めたい」
そんな現場マネージャーやSVの方に向けて、すぐに実践できる具体策をお届けします。
ACW(アフターコールワーク)とは?
ACWの定義とコールセンター業務における役割
アフターコールワーク(After Call Work:ACW)とは、顧客対応の通話が終了した後にオペレーターが行う事務作業を指します。主な内容は、対応履歴の入力、次回対応のフラグ設定、CRMやシステムへの処理登録などです。
この作業は顧客に直接見えない部分でありながら、対応品質の維持や業務の継続性にとって重要な役割を担っています。対応後の記録が正確であれば、後続の担当者がスムーズにフォローできるため、CX(カスタマーエクスペリエンス)全体にも影響を及ぼします。
ACW時間の目安と業界平均(事例紹介)
業界にもよりますが、一般的なACW時間は30秒〜90秒程度が目安とされています。
例:大手通販系コールセンターでは、平均ACWは65秒、金融系では85秒程度というデータもあります。
ACWが長すぎると、次の着信対応が遅れ、応答率の低下や顧客の待機時間増加につながるため、効率化は多くの現場で重要課題です。
なぜACWが長くなる?主な原因を分析
手作業でのCRM入力
多くのコールセンターでは、通話後にオペレーターが手動で応対履歴や顧客情報をCRMに入力しています。
この入力作業が煩雑な場合、次の通話に入るまでに時間がかかってしまいます。
応対履歴の詳細記録負担
品質管理の観点から、応対内容を詳細に記録する文化が根付いている現場では、「書くべき内容が多すぎる」という課題が発生します。
不十分なマニュアルやルール不統一
「どう記録すればよいか」が明確でない場合、オペレーターごとに記録の粒度やフォーマットが異なり、悩んでいる時間そのものがACWを延ばす原因になります。
ACWの効率化がもたらすメリット
応答率・AHT改善による顧客満足向上
ACWを効率化すると、オペレーターが次の通話に早く対応できるようになり、応答率の向上につながります。
オペレーターの心理的負担軽減
通話後に急いで入力作業をこなさなければならないプレッシャーは、オペレーターにとって大きなストレスです。
離職率低下と新人育成コスト削減
ACWの負担が軽減されることで、職場環境の改善 → 定着率の向上、さらに教育コストの削減にもつながります。
効率化の具体的手法5選
① マニュアルとテンプレートの整備
記録内容のテンプレート化や記述例のマニュアル整備により、オペレーターが迷う時間を削減できます。
② CRM・CTIの入力支援ツール活用
CRMやCTIにおける自動入力やポップアップ機能で、作業の手間を削減できます。
③ 音声認識AIによる自動要約
通話内容をAIが自動で文字起こし・要約することで、記録作業の大幅な短縮が可能になります。
④ RPAでの処理自動化(例:ログ転記、処理分岐)
定型業務をRPAで自動実行することで、後処理作業を人手に頼らず完結できます。
⑤ 応対後評価を減らす業務設計見直し
「毎回評価」から「定期レビュー」への移行など、設計変更によりACW自体の必要性を減らせます。
KPIで見る効果測定と改善サイクル
測定すべき指標(ACW、AHT、FCRなど)
ACW改善の効果測定には、ACW単体だけでなく、AHT(平均処理時間)やFCR(初回解決率)との連携が重要です。
改善サイクルにおけるPDCA運用
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の流れで、継続的に業務を最適化しましょう。
まとめ:効率化はCXと人材定着の第一歩
ACWの効率化は、単なる作業短縮にとどまらず、顧客満足度の向上・応答率改善・人材の定着強化など、コールセンター全体のパフォーマンスに大きく貢献します。
オペレーターを「効率化のための手段」ではなく、「価値ある接点」として捉え直し、仕組みとテクノロジーで支えることが、これからの現場改革の鍵です。
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