「リピーターを増やしたい」「お客様の満足度を数値で把握したい」
このような課題を抱える飲食店経営者は多いのではないでしょうか。
そんな中、注目されているのが NPS(ネット・プロモーター・スコア) という指標です。元々はBtoBやIT業界で導入されてきたNPSですが、最近では飲食業界でも導入事例が増え、実際に成果を上げている企業も少なくありません。
本記事では、飲食店がNPSを導入するメリット、活用のコツ、そして実際に取り入れて成果を上げた「丸亀製麺」と「焼肉きんぐ」の事例をご紹介します。
NPSとは?飲食店でも使える顧客満足度の新指標
NPS(Net Promoter Score)とは、顧客に「あなたはこの店舗を家族や友人に勧めたいと思いますか?」と尋ね、その回答をもとにスコア化する手法です。
具体的には、0〜10点で評価してもらい、以下のように分類します。
• 9〜10点:推奨者(Promoter)
• 7〜8点:中立者(Passive)
• 0〜6点:批判者(Detractor)
スコアは、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値で表され、
NPS = 推奨者の割合 − 批判者の割合 で算出します。
NPSを導入するメリット(飲食店の場合)
1. 顧客満足度を定量化できる
通常、クチコミやSNS評価は定性的でばらつきがありますが、NPSを使うことで「何がよくて、何が悪いのか」が点数とコメントで把握できるようになります。
2. 改善点を見つけやすくなる
フリーコメント(VOC)を併用することで、「接客態度が悪かった」「注文が届くのが遅かった」など、改善すべき具体的な箇所を明確に特定できます。
3. スタッフのモチベーション向上
点数が良ければスタッフの成果として認識され、接客意識が向上するきっかけにもなります。定期的な測定を通じて、店全体のサービス品質向上に寄与します。
【事例1】丸亀製麺:現場主導でNPS改善を推進
讃岐うどんチェーンの丸亀製麺では、NPSを活用して店舗ごとのサービス品質を改善しています。
特徴的なのは、「店舗単位でVOCを分析し、現場主導で改善策を出していく仕組み」を取り入れている点です。
たとえば、お客様から「麺のコシが店舗によって違う」といった声が寄せられた場合、現場で即座に調理工程を見直すといったPDCAが現場レベルで回されています。
さらに、全店舗のNPSを毎月スコア化し、従業員にも共有。良いスコアを出した店舗は全社で表彰される仕組みを導入し、スタッフのモチベーションアップにもつなげています。
【事例2】焼肉きんぐ:ファン作りにNPSを活用
「お客様が“ファン”になってくれるか」を重視する焼肉きんぐでは、NPSをベースにした顧客満足度向上策を展開しています。
注目すべきは、「スタッフ対応が9割を決める」という考えに基づき、接客面の評価にNPSを活用している点です。
たとえば、批判的なコメントが集中した店舗では、エリアマネージャーが即座に介入し、ロールプレイングや接客研修を実施。その結果、翌月にはNPSが大幅に改善した事例もあります。
また、好意的なコメントがあったスタッフは社内SNSで称賛され、従業員満足度(ES)向上にもつながる好循環を生んでいます。
✅ 飲食店向けNPSアンケート設問例(全15問)
■【NPSコア設問】
- 本日ご利用いただいた体験をもとに、当店を友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?
(0〜10点でご回答ください) - その評価の理由をお聞かせください。(自由記述)
■【サービス・接客体験について】
- スタッフの接客態度にご満足いただけましたか?(7段階評価)
- 注文時の待ち時間にご不満はありませんでしたか?(7段階評価)
- お料理の提供スピードについて、どう感じましたか?(7段階評価)
■【料理・品質に関する設問】
- お料理の味に満足されましたか?(7段階評価)
- メニューの品揃えにご満足いただけましたか?(7段階評価)
- 提供された料理の温度や盛り付けについて、どう感じましたか?(7段階評価)
■【店舗環境・清潔さ】
- 店内の清潔さにご満足いただけましたか?(7段階評価)
- 店舗の雰囲気や居心地について、どう感じましたか?(7段階評価)
■【価格に関する評価】
- 提供されたサービス・料理に対して、価格は妥当だと感じましたか?(7段階評価)
■【再来店意向・満足度】
- また当店をご利用いただけたいと思いますか?(はい/いいえ)
- 今回のご利用で、どのくらい満足されましたか?(7段階評価)
■【自由記述・改善提案】
- 当店へのご意見・ご要望があればご記入ください。(自由記述)
■【属性・背景情報(分析用)】
- ご来店の目的を教えてください(選択式)
- 一人での食事
- 家族との食事
- 友人・知人との食事
- 接待・ビジネス利用
- その他(自由記述)
QRコードをレシートや卓上POPに掲載すれば、スマホから簡単に回答してもらえます。
NPS導入で成果を出すためのポイント
1. 定期的な測定とスコア推移の確認
2. NPSとの相関が高いネガティブなコメントから対処をする
3. 現場と本部が連携をした改善活動
まとめ:NPSを味方につけて「選ばれる飲食店」に
NPSは単なるアンケート指標ではなく、リピーターを増やし、サービスを磨き上げるための“経営ツール”です。
丸亀製麺や焼肉きんぐのように、現場と一体になってNPSを活用すれば、顧客満足度だけでなくスタッフの意識改革にもつながります。
「うちは小規模だから関係ない」と思う前に、まずは無料ツールで小さく試してみることをおすすめします。
NPSは、飲食店経営における「顧客の声」を可視化する最強の武器になるはずです。
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